変化し続ける日本の製薬業界市場
今まで数多くの新薬メーカーが利益を出してきたのは、特許が満了した先発品である「長期収載品」のお陰でした。長期収載品とはMR(Medical Representative)といわれる製薬業界の営業が特許満了する前に処方する医療従事者様々な方法でプロモーションし疾患領域の第一選択薬つまり医療従事者の一番お気に入りの薬にすることで、特許満了後もブランド力で勝負し続けることができました。この長期債集品で利益を創出しその利益で次の新薬開発に投資していく。というのが新薬メーカーのビジネスモデルでした。しかしこのビジネスモデルはここ数年で崩壊の一途を辿っています。理由として疾病構造の変化と国内医療政策の変化の二つの変化によるものです。
疾病構造の変化としては戦後復興期には栄養失調などが多い時代のニーズによりビタミン剤が必要とされ、結核などの感染症は不治の病とされていました。その後、抗生物質の研究開発が進み、肺炎や主筒後の感染症も克服可能な病になりました。また1980年代には胃潰炎といえば手術して入院することが主流でしたが消化性潰瘍薬の登場により治療が可能になりました。近年では生活習慣病。食生活の欧米化や喫煙、飲酒、運動不足などから引き起こされる高血圧、脂質異常症、糖尿病などが主流でした。そして現在、製薬業界を牽引しているのが抗がん剤であるオンコロジー領域。昔がんといえば告知されたら死を意味する時代もありましたが現代において克服可能な疾患となりつつあります。しかしながら、オンコロジー領域は開発リスクが高く、承認、販売まで辿り着くのが困難な状況です。癌のなかでもオンコロジー領域に絞って開発するため患者数も少なく、治験対象者を集めにくいこともあります。そのため、オンコロジー市場は国際共同臨床試験が中心となっており、グローバルで多くの症例を獲得し、多くのデータを集めることができる外資系製薬会社の資本力、開発力に頼るところが大きく、今の日本の製薬業界を牽引しているのは外資系製薬会社といっても過言ではありません。
また、国内医療政策も今までの日本の製薬業界のビジネスモデルを崩壊させた一員です。先日ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学特別教授 本庶佑の研究を基にして作られた免疫薬「オプジーボ」も薬価収載時は72万9849円と高価だったものの2017年2月に50%割り引かれ更に2度の薬価引き下げにより薬価収載時の76.2%安い17万3768円に引き下げられている。こういった薬価引き下げなどの国内医療政策が製薬業界を貶めている。
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鈴木勘介